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『ハクソー・リッジ』あらすじと感想~徹底的にリアルな戦場描写が凄まじい傑作映画

投稿日:2017年7月15日
更新日:

メル・ギブソン監督、アンドリュー・ガーフィールド主演の映画『ハクソー・リッジ』を観てきました。

 

「ハクソー・リッジ(Hacksaw Ridge)」とは、第二次大戦時の沖縄の激戦地となった崖のアメリカ側の呼び名。

沖縄の浦添市にある場所で、日本では前田高地と呼ぶ土地のことです。

「ハクソー(Hacksaw)」は「弓のこ」。「リッジ(Ridge)」は「崖」のことですので、弓のこで切ったように垂直に切り立った崖ということですね。

 

公開前から映画館の予告で観てすごく気になっていた映画なのですが、沖縄戦を舞台にした映画であるということは巧みに隠されていたような気がします。

確かに、主人公のアメリカ兵の視点から沖縄戦を描いた映画なので、日本人は敵として描かれるわけで、日本人としては少し複雑な気持ちにもなりますよね。

でも、沖縄戦を描いているから観に行かないという人は、そもそもこの映画を観に行かないと思いますし、僕のように沖縄戦のことを知りたいというのを動機のひとつとしてこの映画を観に行く人も多いと思いますので、沖縄戦であるということを宣伝しないのはどうなんでしょうね。

 

映画は本当に素晴らしくて、戦争映画の歴史に名を残す傑作だと思います。

それではさっそく『ハクソー・リッジ』の紹介と感想を書いていきます。

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『ハクソー・リッジ』のあらすじ

『ハクソー・リッジ』は、デズモンド・ドスという実在の人物を主人公にした実話をもとにした映画です。

デズモンド・ドスとは

デズモンド・ドスは、第二次世界大戦に陸軍兵士として従軍したものの、「良心的兵役拒否者」であることから、武器を持たない衛生兵として戦場に赴きました。

沖縄戦では日本兵も含む多くの人命を救い、戦後「良心的兵役拒否者」として初めて、アメリカ軍人最高位の名誉勲章である「メダル・オブ・オナー」を与えられたという人物です。

 

映画はデズモンド・ドス(アンドリュー・ガーフィールド)の幼少期から青年期の描写、陸軍での新兵訓練と良心的兵役拒否を認めさせる軍法会議の描写、そして沖縄のハクソー・リッジでの戦場の描写と、大きく分けて3幕構成になっています。

デズモンドはなぜ「良心的兵役拒否」をつらぬいたのか

幼少期から青年期を描く第一幕では、デズモンドがなぜ「良心的兵役拒否」をつらぬいたのかというバックグラウンドが描かれます。

デズモンドが育った家では、キリスト教の宗派のひとつであり、非暴力を信条とする「セブンスデー・アドベンチスト教会(Seventh-day Adventist Church)」を信仰していました。

幼少期、デズモンドは兄との喧嘩の際、とっさに足元にあったこぶし大の石を拾い上げ、兄の額を殴りつけて気を失わせてしまいます。

兄は一命をとりとめますが、デズモンドは深く反省し、神様に非暴力を誓います。

父と息子の物語

一方デズモンドの父親は、第一次世界大戦に従軍し、多くの戦友を失ったことで心に傷を負った人物として描かれています。

ほとんどアル中のような感じで、酒を飲んでは妻に暴力をふるうのですね。

あるときは、妻にピストルの銃口を向けたこともありました。

このときはデズモンドがピストルを取り上げたのですが、こうした様子を見ることによって、デズモンドは非暴力への思いを深めたのです。

はっきりいって最低の父親なのですが、デズモンドが陸軍に入隊後、「良心的兵役拒否」をつらぬくがゆえの命令拒否を理由に軍法会議にかけられたとき、デズモンドを救うのがこの父親なのですね。

このあたりは父と息子の物語としても楽しめます。

『フルメタル・ジャケット』のような新兵訓練

そんなデズモンドですが、戦争が本格的になり周囲の友人や兄弟が続々と入隊するなか、自分も祖国に尽くしたいという思いで陸軍に志願。

映画の舞台は陸軍の新兵訓練所に移ります。

 

ここでの新兵訓練の様子は、なんとなくスタンリー・キューブリック監督の映画『フルメタル・ジャケット』の新兵訓練シーンを彷彿させるものでした。

鬼軍曹がいたり、アメリカ各地から集った個性的な仲間がいたり。

 

新兵訓練の様子から描く戦争映画って案外少ないような気がします。

普通の若者たちが地獄の新兵訓練を通して戦闘マシーン・殺人マシーンになっていく様子を見ることによって戦争の生々しさ、悲惨さがリアリティを増します。

第二次大戦時の良心的兵役拒否者について

ところで、アメリカの軍隊には良心的兵役拒否者という仕組みがあります。

ベトナム戦争の頃には軍隊内でもシステムとして組み込んでいたようですが、第二次大戦時にはまだまだ良心的兵役拒否者をどう扱っていいのかということは仕組み化されていなかったのですね。

デズモンドは、「良心的兵役拒否者」という立場で武器を持たない衛生兵として従軍したいと希望しますが、部隊ではそれは認められません。

武器を持たない兵士がいることで、全体の士気が落ちたり他の兵士を危険にさらすことになると思われていたのですね。

デズモンドは除隊するように促されます。

 

この除隊を促すというところは、アメリカってすごいなあと思いました。

当時の日本軍であれば、そもそも良心的兵役拒否者などという存在は認められないでしょうし、除隊させるという方法で解決しようとはしない気がします。

 

とにかくデズモンドは、除隊のすすめを拒否して軍隊に残ろうとします。

そうすると周りから白い目で見られるようになるのですね。

軍曹はデズモンドが武器を持たないということを連帯責任としてデズモンドの仲間たちに押し付け、デズモンドは仲間たちから暴力を受けたりもします。

そんな困難にも耐え、なんとか訓練をこなしていたデズモンドですが、最終的には命令拒否を理由に軍法会議にかけられてしまいます。

そのときデズモンドのために動いてくれるのが、先程も書いたように、デズモンドが憎んでいた父親なんですね。

また、デズモンド自身も自分の意見を主張することで、部隊内でデズモンドの存在が認められることになります。

 

そして、映画の舞台はいよいよ沖縄のハクソー・リッジへと移動します。

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とにかく戦場のシーンがすごい

この映画の凄さは、とにかく戦場シーンのリアルな描写というところにつきます。

 

これまでにも『地獄の黙示録』『プラトーン』『フルメタル・ジャケット』『プライベート・ライアン』『フューリー』など、リアルな戦場を描いた戦争映画の名作は数ありますが、『ハクソー・リッジ』の戦場の凄まじさはそれらの映画を軽く超えています

 

『ハクソー・リッジ』で描かれるのは、あれこれ考える暇もないほど凄まじい戦場で、映画後半の結構な長時間が戦場シーンなのですが、唖然としている間に終わってしまったというような感じです。

 

『ハクソー・リッジ』は「PG-12指定(12歳未満は保護者同伴)」となっていますが、保護者同伴であっても子どもが観るのはちょっとどうですかね。

血を見るのが苦手とか、残酷なシーンが苦手という人もやめておいたほうがいいかもしれません。

今まで隣で話していた戦友が、機関銃で撃たれて内臓を撒き散らしながら、手足を引きちぎられて死んでいく。

そんな凄まじい描写が繰り返されます。

 

『ハクソー・リッジ』の舞台となる戦場は切り立った崖の上ですので、アメリカ軍としては戦車や装甲車、重火器などを運ぶことができず、海上の戦艦からの艦砲射撃と、ライフルと迫撃砲を持った歩兵部隊に頼るしかないんですね。

日本軍としても、備え付けの機関銃くらいはありますけど、重火器や戦車はありません。

なので、終始至近距離での歩兵部隊同士の撃ち合いによる戦闘が描かれるんですね。

これだけの至近距離での戦闘を細かく描いた映画ってこれまでなかったと思います。

アメリカ兵が近くにいた日本兵に手榴弾を投げようとしたら、組み付かれて手榴弾を投げることができず、そのまま二人とも吹き飛んでしまうというようなレベルです。

最終的には双方が突撃して、銃剣での斬り合いのような白兵戦になるんですね。

凄まじい。

 

この凄まじい戦場で武器を持たない衛生兵として、多くの兵士を救助するデズモンドの様子は、すこしご都合主義のような印象を受けないでもありませんでしたが、本当に奇跡のようにすごいことです。

 

アメリカ側から見た沖縄戦の描写ですが、日本人や日本兵が悪く描かれているという感じは受けませんでした。

畏怖の念をもって日本兵を描いてくれていると思います。

おわりに

沖縄戦というテーマであったり、戦場シーンの凄まじい描写があることから、万人におすすめできる映画ではないのですが、やはり多くの人に観てほしい映画です。

世界平和を考える方法はいくつもありますが、その一つの方法として徹底的に悲惨な戦場を描いたこの映画を観て平和を考えるというのもありだと思います。

いろいろな見方ができる映画ですが、僕はこの映画を観て絶対に戦場には行きたくないと思いましたし、平和について考えました。

 

以上、『ハクソー・リッジ』の紹介と感想でした。

 

※追記

前田高地はアメリカ側から「ハクソー・リッジ」の ほかに 前田断崖という意味の「マエダ・エスカープメント(Maeda Escarpment )」とも呼ばれていたそうです。

 

この前田高地の戦いを日本側の視点で書いたのが、角川ソフィア文庫から出ている外間守善さんの『私の沖縄戦記 前田高地・六十年目の証言』という本。

こちらも今度読んでみようと思います。

 

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