『ヒア・アフター』感想 ~ 地味だけど良質な深いテーマを描いた映画

こんにちは!くまらぼです。

amazonプライムビデオで、『ヒア・アフター』という映画を観たので感想を書いておきます。

 

 

この映画、主演はマット・デイモン。

監督はクリント・イーストウッド。

製作総指揮をスティーブン・スピルバーグが担当というすごい豪華なメンバーによって作られているのですが、日本での知名度は案外低いです。

 

その理由のひとつは、この映画が公開1ヶ月で上映中止になっているからです。

映画が公開されたのが2011年の2月19日。

東日本大震災の約1ヶ月前です。

『ヒア・アフター』では、冒頭で迫力のある津波のシーン(スマトラ島沖地震)があることや、生と死というテーマを扱った重い作品であることから、公開中止という判断になったのだと思います。

ただ、基本的に地味な作品ですし、生と死という哲学的なテーマを扱いつつ、観る人に解釈を委ねるような作りになっているので、公開中止になっていなかったとしても、それほどメジャーになることはなかったんじゃないかと思います。

『ヒア・アフター』の感想と紹介

この映画は、国籍も環境も異なる三人のストーリーを軸に進んでいきます。

一人目は、バカンス中に津波に巻き込まれ、生死をさまよう体験をしたフランス人女性マリー。

二人目は、霊能力を持ちながらも、その能力を使うことを拒否しながら生きているアメリカ人男性ジョージ。

三人目は、双子の兄を交通事故で亡くし、ドラッグ中毒の母から離され里子に出されるロンドンの少年マーカス。

 

この三人は、それぞれの形で死後の世界と関わっています。

 

マリーは、フランスで有名なニュースキャスターなのですが、生死をさまよった際に見た光景(死後の世界?)が気になり、仕事が手につかなくなります。

 

キャスターの仕事を少し休んで、休暇をかねて前から企画があったらしいミッテラン大統領の伝記を書くことにしますが、出版社に断り無く、自分が体験した死後の世界についての本を書き上げてしまいます。

この本のタイトルが、映画のタイトルにもなっている『ヒア・アフター(来世)』。

ミッテラン大統領の伝記を書いているものだと思っていた出版社は当然激怒。

「この手の本はフランス人は読まない。英語で書いてイギリスかアメリカで売れ」

そう怒鳴りつけられてしまいます。

結局マリーは信頼を失い、キャリアを失うことになります。

 

ロンドンの少年マーカスは、里子に出されたものの、里親に心を開くことができません。

自分の分身ともいえる双子の兄、ジェイソンともう一度話したいと、里親の家からお金を盗み、ロンドン中の霊能力や心霊研究家を訪ねます。

ですが、それらはすべてインチキでした。

 

マット・デイモン演じるアメリカ人男性ジョージは、幼いころの臨死体験がきっかけで、手を触れた相手の霊視ができるという能力を身につけます。

野心家の兄のプロデュースのもと、以前は霊能力者として活躍し、本も出版していたようなのですが、いまはその能力を使うことをやめ、工場の工員として働いています。

ジョージにとって、霊視をして相手のすべてを知ってしまうということは、相手とのコミュニケーションの断絶を意味するんですね。

そのことが象徴的に描かれるのが、料理教室でいい感じになった女性・メラニーとのエピソード。

メラニーはたまたまジョージに霊能力があることを知り、霊視を頼みます。

ジョージは、「知りすぎないほうがいい関係を築ける。知りすぎてしまえばこれまでの関係ではいられなくなる」というようなことを言って霊視を拒否しようとするのですが、押し切られてしまい結局霊視をすることに。

その結果、メラニーが父親から虐待されていたという過去を見てしまい、メラニーを傷つけてしまうことに。

メラニーはジョージの前から姿を消します。

 

こんな感じで淡々とストーリーが進んでいくのですが、ラストで三人の人生は交差し、クライマックスを迎えることになります。

 

映画の終盤、ジョージはマーカスの霊視をすることになるのですが、ここがこの映画のポイントなのかなと思います。

ジョージが霊視したマーカスの兄ジェイソン。

マーカスに一通りメッセージを伝えたあと、「もう行くよ」と言って去ってしまいます。

それを聞いて悲しむマーカスに、ジョージは「また戻ってきた」と言って、マーカスを励ますジェイソンからのメッセージを伝えるのですが、ここでジョージは嘘をついたんじゃないかと思うのです。

自分のもとから去ってしまうと分かっていても、メラニーに嘘をつけなかったジョージがなぜマーカスに嘘をついたのかという説明はないのですが、マーカスに嘘をつくことによって、ジョージは自らにかけられていた呪いを解くことができたのではないかと思います。

これまで死者の世界を見て、死者のメッセージを伝えるという霊能力を呪いだと捉えていたジョージが、霊能力を生きている者の癒やしとして使うというポジティブな考え方に変わったのだと思います。

そしてそれに続くマリーとの出会いのシーン。

ジョージはためらうことなくマリーと手をつなぎます。

 

アナと雪の女王のエルザや、シザーハンズなどもそうですが、手で触れることで不幸になる呪いというモチーフが、いろいろな物語のなかで出てきます。

触れるという行為がコミュニケーションの断絶になってしまうのですね。

『ヒア・アフター』もそうした触れるという呪いから解放される話だと思いました。

 

以上、複雑で観た人それぞれの意見がありそうな映画ですが、『ヒア・アフター』の感想を書いておきました。

 

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